田舎に生きるふつうのおばさん2

北海道の田舎で農業を営むおばさんです

ふるさとの話

ふるさとは 寒い寒いところです

小学1年生のみーは 毎日一人でトボトボと

学校へ6キロの道のりを歩きました

上級生はどんどん先に行ってしまいます


帰りも一人ぼっち トボトボ トボトボ…

深い雪の道なき道を歩きます

家まであと半分 という辺りまで来ると

いつも後ろから ザックザックと

雪を踏みしめる力強い音が聞こえてきます

後ろから 郵便配達のおじさんがどんどん近付いてきます

みーに追いつくと いつもおじさんはこう言います

「みーちゃん 手袋を脱いでごらん おじさんのと取り替えっこしよう」

そう言って みーのはめている 雪まみれの毛糸の手袋を 

ポンポンと 自分の体にたたきつけて 雪を落とし

自分のおなかのところ ズボンのベルトに挟みます 

そして みーには 今までおじさんがはめていた ホカホカの手袋を

はめてくれます

そして「みーちゃん おじさんは先に行くけど 

また戻ってきたときに会うからその時にまた取り替えっこだよ 

頑張って歩くんだよ」そう言っておじさんは みーを追い越して 

一本道を大股でどんどん 集落の奥に向かって歩きます

みーはまたトボトボ…

みーが だいぶ家に近づいた頃 おじさんは 一番奥のみーの家まで

配達して また同じ道を戻ってきます 

そして「みーちゃん頑張ったね もう少しだよ ハイ手袋の交換だよ」と

ズボンのベルトに挟めてあった みーの毛糸の手袋を返してくれます

その時には 手袋はおじさんの体温で温められてホカホカです

いつもいつも郵便のおじさんは そうやって

1年生のみーを励ましてくれました


そのおじさん  今日亡くなりました

火事で…

ふたりで仲良く暮らしていた奥さんも一緒に…


おじさん 

優しいおじさんの優しく笑った顔 

大きな暖かい手 

おじさんは みーの中で 

ずっとずっと 生きているからね

ありがとう おじさん