田舎に生きるふつうのおばさん2

北海道の田舎で農業を営むおばさんです

朝寝坊遍歴 北海道新聞 北極星 5月25日掲載

今は田植えの最盛期。

始まりから終わりまで、怪我をしないよう、事故を起こさぬよう、

気を張って挑む。

疲れのピークは三日目にやってくる。

仕事のペースに体が慣れて緊張が少しゆるんでしまうせいか、

いつも三日目が一番つらい。

疲れているのに眠れず、睡眠のリズムを崩す。

だがその頃はまだ、朝はちゃんと起きられる。

それから更に数日、いよいよ田植えも終盤、

明日には終わるという頃に、

先が見えて安心するせいか大きく気がゆるむ。

毎年のようにそのあたりで私は大寝坊をする。

二十代の頃は優しく起こしてくれた夫も

三十代になると、ものも言わずいきなり布団を剥がすようになり、

なんて愛のない人だろうと思ったものだ。

しかし年とともに寝坊をしても黙って放って置かれるようになり、

そのときほど気まずいことはなく、

起こしてくれるうちは愛があったのだと気づく五十代。

朝ごはんは六時から。

私が寝坊すると夫が味噌汁を作る。

台所に立つ夫の背中で怒りのオーラが燃えている。

とても近寄れない。

それが不思議なことに五十代最終章の最近は

怒りのオーラが消えている。

愛の復活か、それとも完全にあきらめられたのか。

いずれにせよ今年の田植えもあと少し、

最後まで気を抜かず頑張ろう