田舎に生きるふつうのおばさん2

北海道の田舎で農業を営むおばさんです

父と息子 (旭川新聞 H24年8月7日掲載)

私達が結婚してからずいぶん年月が過ぎた
当時、姑はすでに他界していて舅と三人での農家生活が始まった。
二十二歳同士の若い夫婦、今にして思えば幼かったと思う。
そんな私達を、舅はいつも穏やかに口数少なく見守ってくれた。
余計なことは言わず、黙って夫に仕事を任せた。
失敗したときは黙々と後始末を手伝ってくれた。
 今は、息子が私達と一緒に農業をしている。
私達も舅を見習って黙って見守りたいと思うが、実際にはなかなかそうはいかない。
失敗しないよう先回りをして、ついあれもこれも言ってしまう。
こうなってみて舅の忍耐強さを改めて感じている。
 夫の帰りが遅くなると何度も窓の外を見てそわそわしていた舅だったが、
今は夫が息子に対して同じことをしているのには笑ってしまう
夫を心配する舅にも息子を心配する夫にも、私は同じことを言った「もう大人なんだから」と
しかしどちらの父親にとっても息子を大人とはなかなか認めたくないようで、そんなところまでよく似ている
 舅は農作業中の事故で突然逝ってしまった。
私の息子が7歳の時だった。
 先日、舅の夢を見た。
まだ赤ちゃんの息子を抱いて優しいまなざしで見つめていた。
たかが夢だけど舅が天国から孫である息子を見守ってくれているのだと思えて、嬉しい朝だった。
舅もようやく夫を大人と認めて、孫の心配をするようになったのかもしれない。