田舎に生きるふつうのおばさん2

北海道の田舎で農業を営むおばさんです

旭川新聞 並木道

旭川新聞 並木道 2019年10月14日掲載

決断のとき ひとり暮らしの母の家に毎週ビールが箱で届くようになった。86歳の母は毎週宴会を開くわけでも酒豪でもない。ただお盆のお客さんのために一度カタログで注文したのは知っている。「私は頼んでいないのに何度も届く」とは本人の弁。3 週続いてさす…

終業のチャイム 旭川新聞並木道 2019/6/11

終業のチャイム 春一番の大仕事、田植えが今年も無事に終わった。 我が家は私たち夫婦と息子の三人で営農している。 還暦を過ぎれば世の定年にならって 少しは楽ができるかと思えば大間違いで、 年とともに体が辛くなるのに、 毎年耕作面積が増え、家族労働…

動物園へ行こう 旭川新聞 並木道 平成31年2月19日

動物園へ行こう 冬になるとどうしても運動不足になる。 家の周囲の散歩では毎度同じ景色に飽きてしまう。 そうだ、動物園へ行こう。 あそこは広い、園内を歩くだけでも良い運動になるはず。 地元なのに、地元だからか、もう10年以上も行ったことがなかった。…

収穫の秋に思うこと 旭川新聞 並木道 2018/10月8日

収穫の秋に思うこと 長年農業をしていると、過去にもいろいろありましたが、 今年はまたひとつ記憶に残る年になりそうです。 お客さんにお米を配達するたびに 「大丈夫だったのかい」と心配してもらいました。 次から次へ災害がありすぎて、 お客さんがいつ…

つもりだった 旭川新聞 並木道 2018/1月30日

年末に生けたお花が、暖かい部屋の中で思いのほか長く咲いて、 半月ほど楽しんだあとに片付けた。 だめになった花を少しずつ入れ替えようと 予備の花も買ってあったのに、 その花は予備の花瓶の中で枯れてしまった。 かわいそうなことをした。 この花たちも…

愛のイチゴ 旭川新聞2017 9/19掲載

今年もイチゴの苗を植えました。 イチゴは秋に植えて次の年の初夏に収穫します。 イチゴには特別な思い入れがあります。 子供の頃、畑に入ることは許されませんでした。 きっと勝手に入って踏みつぶした前科者だったのでしょう。 でも、だからといって採って…

ラーメンを考える 旭川新聞 並木道 2017/5/16掲載

たまに無性にラーメンが食べたくなる。 注文するのはいつも決まって「塩」。 昔は普通の塩ラーメンにも、もやしがのっていたように記憶するが、 いつの頃からか普通ラーメンからもやしが姿を消した。 ネギ、メンマ、チャーシューのいわゆるラーメン三種の神…

餅つき 旭川新聞並木道2017/1月?日掲載

餅つき 12月は餅つきに始まり餅つきで暮れました。 月初めには、私が所属する加工部の恒例行事で。 加工場の本格的な餅つき機で35kgの米を白、ごま、豆、 よもぎを混ぜ込んでつきました。 中旬には我が家に友人を誘って、 これも恒例になったランチ付き餅つ…

20年後の自分へ 旭川新聞並木道 2016 9月27日

気が多い私は、過去に色々儲からない副業に手を出してきました。 ある時期、運良く少し収入を得たことがありました。 たいそうな金額ではないのですが、 そのままにしておくと家計費に紛れてしまいます。 頑張った証を何かの形で残したい、 と思いついたのが…

今日の漬け物は 旭川新聞並木道 2016 7月5日

我が家の食卓に漬け物は欠かせない。 夫が血圧の薬を飲み始めたときは一時期漬けるのを控えていたが、 大好きなものを我慢するなんてこちらが病気になりそうで 夫には申し訳ないが間もなく解禁した。 今時期は胡瓜の浅漬けが美味しい。 胡瓜を丸ごと数本ビニ…

ひとり暮らし 旭川新聞 並木道 2016/4月12日

ひとり暮らし 新年度が始まった。 もう一昔も前のことだが、娘が初めて家を離れて短大の寮に入ったときのことを思い出す。 娘の引っ越しを終えて家に戻った私に、夜になって「ひとりぼっちで寂しい」とメールが来た。 歯がゆい思いでこちらからも励ましのメ…

素面(しらふ)の勢い 旭川新聞 並木道 平成28年1月19日

素面(しらふ)の勢い 私は下戸のくせに、飲み会に誘われると喜んで出かけていく。 グルメな友人の選ぶお店では、お酒がなくても美味しい料理と楽しい会話に酔うことができる。 ある日の飲み会、二軒目の店で、知り合いのグループと合流した。 話も弾み宴も…

母の思い 旭川新聞 並木道 平成27年10月20日

83歳の母は野菜づくりを生き甲斐に一人暮らしをしています。 腰が悪くて長くは歩けませんが、車を運転して自由に出かけます。 子供を頼らず自立している姿は尊敬に値します。 近所の方が畑の事など手伝ってくれるので、私も妹もつい甘えて、 あまり心配せず…

人間の檻 旭川新聞 並木道 平成27年7月28日

昨年、イチゴの苗を育てて二百本ほど畑に植えました。 たわわに実るのを想像し、食べきれないだろうから妹にも持って行こう、 それよりいっそ摘みにきてもらおうか…などと捕らぬ狸の妄想を楽しんでいました。 今年は天候不順でしたが、イチゴは初夏の収穫期…

味噌汁 旭川新聞 並木道 平成27年4月21日

一番好きな食べ物は?と聞かれたら、私は味噌汁と答える。 ケーキもお寿司も捨てがたいが、それは無くても生きていける。 しかし味噌汁がなければ一日が始まらない。 旅先のホテルで「たまには洋食を」という仲間にどうぞと言って、一人和食の店へ。 結局、…

おばあちゃん入門 旭川新聞 並木道 平成27年1月13日

昨年十二月、娘が男の子を授かりました。 私たち夫婦にとって待望の初孫です。 お産も育児も私の時代とはすっかり様変わりしていて、 新米ばあちゃんは見るたび聞くたび驚きの連続です。 お産のすぐ後で、娘の胸に生まれたばかりの裸の赤ちゃんが抱かれまし…

保存食作り 旭川新聞 並木道 平成26年9月15日

農業をしていて嬉しいことの一つは、いつも新鮮な野菜が食べられること、 そしてそれが安心な育ちであること。 困るのは、その野菜が一度に沢山穫れるので食べきれないことだ。 せっせと街に住む友達へ持って行くが、貰う方もあちこちから同じものが届いて食…

ヨウ子さんの家 旭川新聞 並木道 平成26年7月8日

昼間でも薄暗い林の中の坂道を上がって行くと突然視界が開ける。 そこにポツンとヨウ子さんの家がある。 ヨウ子さんは夫と力を合わせ鶏を飼い、キノコを育て、畑を耕して六十年近くをこの山の中で暮らしてきた。 五人の子供たちはここから巣立ち、家庭を持ち…

プロに学ぶ料理 旭川新聞 並木道 平成26年4月15日掲載

この冬、飲食店を営むプロが講師という贅沢な料理教室に何度か参加することが出来ました。 一回目は有名ラーメン店のオーナーから「家庭でつくれるラーメンスープ」を教わりました。 市販の材料で家庭でもプロの味が再現できるというもの。 厳密な計量と無駄…

旭川はしっこプロジェクト 旭川新聞 並木道 平成26年1月21日掲載

昨年十二月、十数人が集まり旭川の端っこを熱く語る会が行われました。 旭川の端っこに位置するぺーパンや江丹別という地域に魅せられた人たちで 自然発生的に発足した会です。 この日、札幌からも三人が駆けつけました。 そのうちの一人はこの一年の間に「…

稲刈りと子供たち 旭川新聞 並木道 平成25年10月8日掲載

稲刈りの季節になると思い出す出来事がある。 二十数年前、春に義父が急死し、それをきっかけに私も本格的に田んぼデビューした。 あの年の稲刈りは田んぼがぬかるんで大変だった。 当時我が家には一年生を頭に三人の子供たちがいた。 まだ家で留守番はでき…

米作り(旭川新聞 平成25年7月16日掲載)

春先、いつまでも溶けない雪に気をもみながら今年の米作りが始まった。 季節は移り、今は緑に染まった水田に約束したかのように夏の日射しが降り注ぐ。 「へび年に豊作なし」などという言葉を気にしながらも、いつも通りに種を蒔き、田植えをして、草を刈る…

ブログから広がる世界(旭川新聞 平成25年4月23日掲載)

何事にも熱しやすく冷めやすい私が、ブログなるものを始めて3年になる。 きっかけは当時関わっていた農産物加工品販売の宣伝になれば、という思いだった。 はじめはインターネットという未知の世界へ足を踏み入れる興味と畏れが半々だった。 嫌なことがあっ…

ペーパンの味(旭川新聞 平成25年1月29日掲載

友人たちとのおしゃべりで、自分の作るお雑煮のルーツの話題になった。 一人は実家の味だと言い、もう一人は料理上手なお姑さんの味だと言う。 私はそのどちらでもない。 実家のお雑煮は具の少ないあっさりした味で、子供の頃はあまり好きでなかった。 嫁い…

ハガキ(旭川新聞平成24年11月13日掲載)

長野県に住む姉はあるとき、旭川に暮らす老いた両親に毎日ハガキを書こうと決めました。 私が実家へ行くと、母は姉から届いたハガキをよく見せてくれました。 両親は読むだけで、返事は書きません。 いくら姉が好きで始めたこととはいえ、一方通行ではつまら…

保存食づくり(旭川新聞H24年10月2日掲載)

我が家は稲作農家です。 畑では自家用野菜を少々育てています。 少々のつもりなのですが、茄子は一袋の種を全部蒔いて育てると六十本余りもあり、 とうきびは二百本以上も植えることになります。 胡瓜だと苗を十本植えると毎日食べても食べても追いつかない…

父と息子 (旭川新聞 H24年8月7日掲載)

私達が結婚してからずいぶん年月が過ぎた 当時、姑はすでに他界していて舅と三人での農家生活が始まった。 二十二歳同士の若い夫婦、今にして思えば幼かったと思う。 そんな私達を、舅はいつも穏やかに口数少なく見守ってくれた。 余計なことは言わず、黙っ…