田舎に生きるふつうのおばさん2

北海道の田舎で農業を営むおばさんです

稲刈りと子供たち 旭川新聞 並木道 平成25年10月8日掲載

稲刈りの季節になると思い出す出来事がある。
二十数年前、春に義父が急死し、それをきっかけに私も本格的に田んぼデビューした。
あの年の稲刈りは田んぼがぬかるんで大変だった。
当時我が家には一年生を頭に三人の子供たちがいた。
まだ家で留守番はできず、農道に停めた車の中で作業が終わるのを待たせた。
当時のコンバインは少しでもぬかるとすぐ立ち往生した。

夕暮れ時、子供たちのことが気になりながらも機械から離れることができずようやく田んぼを一周して戻って来ると、あたりはすっかり闇に包まれていた。
慌てて子供たちを見に行くと、真っ暗な車の中で三人でワーワーと泣いていた。
農業をしていて一番切ないと思ったことだった。
稲刈りの間だけでも子供を見てくれる人を頼んで、と夫に訴えたが「農家の子は皆そうして育ってきたんだ」とにべもなかった。
 
子供たちは大きな怪我もせず育ってくれた。
育てたというより、育ってくれたのだととつくづく思う。
大声で泣いていた長男は今、コンバインに乗ってバリバリ稲刈りをしている。
三歳だった娘も、農業青年との恋が実り、来春嫁ぐことになった。
あのとき子供と一緒に流した涙が、今は喜びの涙となって頬を伝う。