冷蔵庫の扉を開けると、いきなり頭に何かがぶつかった。
あっ、と落ちていくものを見ながら体が動かない。
ジュースだ、と思うと同時にガラス瓶は床に落ち
中身のしぶきとともに粉々になってあたり一面に飛び散らかった。
痛いおでこを押さえながらしばし呆然。
誰がこんなところにガラス瓶を入れたのか。
ここは怒るべきか、
まてよ、私の扉の開け方にも問題があったかもしれない。
いやしかし、こんな不安定な場所に背の高い瓶を入れる方が悪い。
いや、贈られたジュースをいつまでも片付けなかった自分も悪いのだ。
みるみる腫れてくるおでこをさすってそんなことを考えていると
茶の間から「あんたも大人になったね」と夫の声。
夫の言わんとすることはよくわかる。
今までの私なら瓶が落ちた瞬間、
手でつかまえることは出来なくても素早く足を出して受け止め、
ワンクッションはさんでから着地させていたはずだ。
そして同時に「誰がこんなところに入れたの」と怒鳴っていた。
瞬間に体も動かず声も出せなかったことがショックだった。
しかしそれで褒められたのだから良かったのか。
今年、夫婦揃って還暦を迎えた私たち。
年をとることは悪いことばかりではない。
慌ただしい年の瀬こそ、この調子で心穏やかに暮らそう 。