田舎に生きるふつうのおばさん2

北海道の田舎で農業を営むおばさんです

茄子の油炒め

72歳男 生涯独身

私の従兄弟の中の最年長

一軒家で一人暮らし

まだ仕事にも行っていた

昨年の夏 遠くにすむ妹二人が飛行機に乗って兄に会いに来た

行く末を心配して、家の中の片付けなどして帰った

兄が妹に言った

だいぶいろいろ自分で料理をするようになったけどよ

茄子の油炒めは何回作ってもお袋の作った味にはならないんだよな

妹はもう帰る日で それを兄に作る時間はなかった

そこで私に

生きてるうちに食べさせてやりたいんだよね

と白羽の矢が立った

お安いご用だ

おばさんの味がどんなだったかはわからないけど

だいたいの想像はつく

ただ昨夏の我が家の茄子は不作で

油炒めをするようなものがなかなかとれなかった

気にかかっていたけど 茄子を買ってまで作るものではないと思っていた

秋になってご近所から立派な茄子をいただき

ようやく作ることができた

母が作ってくれた茄子の油炒めはみそ味だった

子供の頃近くに住んでいた従兄弟の家の味だって似たようなものだろう

早速作って届けた

従兄弟は申し訳なさそうに

嬉しそうに受け取ってくれた

従兄弟と会ったのはそれが最後になった

 

この冬 一人でひっそりと

いつも座っていた一人掛けのソファーで座ったまま

亡くなっていた

思い出して昨日作ってみた