田舎に生きるふつうのおばさん2

北海道の田舎で農業を営むおばさんです

北海道新聞コラム北極星  2019(令和1年)9月28日掲載

猫との暮らし

 


 夜になると猫たちの集会があるらしい。出かけるときは一声鳴けばドアが開く。
 集会は夜明け前に終わる。帰ってくると、まず門番の犬の前に立つ。すると犬がお知らせの声を上げる。それで人が目を覚まし、ドアを開けに起きる、という序列ができている。
 私と夫は一番の下っ端だが息子だけが猫よりも偉い。猫はご主人様である息子を熱いまなざしで見つめて後を追い、お風呂のときもトイレのときも、そのドアの前でじっと待つけなげさだ。これが人間の女性ならどんなにか・・・。
 ある日、猫が急にご飯を食べなくなった。昔なら放っておいたものだが、一度くらいは病院へ連れて行こうと思った。動物病院の先生は、いとも簡単に血管を探し当てる。点滴で食欲が復活した。それが数日でまた弱る。また点滴に行く、何度かそれを繰り返し「今日も病院へ連れて行く」と夫に喋った朝、姿を消した。家中探して思いがけない場所に隠れていたのを見つけた時、やはり猫は人の言葉がわかるのだと確信した。
 動物病院で先生に診てもらうとペットの病気も飼い主の気持ちも軽くなる。
 しかしついに力尽きるときが訪れた。部屋の壁と、家族それぞれの心に爪痕を残し猫は旅立った。猫の名はチョロちゃん。今までありがとう。