田舎に生きるふつうのおばさん2

北海道の田舎で農業を営むおばさんです

旭川新聞 並木道 2019年10月14日掲載

 

決断のとき
    
  ひとり暮らしの母の家に毎週ビールが箱で届くようになった。86歳の母は毎週宴会を開くわけでも酒豪でもない。ただお盆のお客さんのために一度カタログで注文したのは知っている。「私は頼んでいないのに何度も届く」とは本人の弁。3 週続いてさすがにカタログの会社に電話をかけた。それ以前にも笑い話のような失敗はいろいろあったが、そろそろひとり暮らしも難しいのかと感じた出来事だった。
 それから妹と相談し、母を連れて施設の見学に行った。いつの間にか立場が逆転して今は私と妹が母の保護者になった。いやがるかと思った母は案外気持ちの切り替えが早く、見学のあと親しい友人らに電話をかけて報告したようだった。ところが入居の予約をして空きを待つ間に、母は家の中で転んでしまった。腰を打って圧迫骨折で入院。
 妹は「もっと早く施設を決めておけば良かった」と言ったが私はそうは思わない。母は二年前に半年間も入院し杖を離せない体になっても頑固にひとり暮らしを続け、畑ではたくさんの野菜を実らせてきた。今回もきっと不屈の精神力で復活すると信じている。物事を決めるタイミングがいつが良かったかなんて誰にもわからない。これからも母が母らしく心穏やかに暮らせるようにいやがられない程度に手をさしのべていきたいと思う。