田舎に生きるふつうのおばさん2

北海道の田舎で農業を営むおばさんです

素面(しらふ)の勢い 旭川新聞 並木道 平成28年1月19日

素面(しらふ)の勢い
       
私は下戸のくせに、飲み会に誘われると喜んで出かけていく。
グルメな友人の選ぶお店では、お酒がなくても美味しい料理と楽しい会話に酔うことができる。

 ある日の飲み会、二軒目の店で、知り合いのグループと合流した。
話も弾み宴もたけなわ、席を移動して初めましてのある男性と名刺交換をした。
話が進むうちに、私は彼の一言二言にカチンと来てしまった。
酒席のたわいもない話、笑って聞き流せばよいものを、素面の勢いで最後通告を言い渡し、席を立った。
それをきっかけにその日はお開きとなり、私は気まずさを抱いたまま帰宅した。

 失敗を酒のせいに出来ないのが下戸の残念なところだ。
一夜明けて、その場面がハッキリとよみがえり、寝不足の頭で一人反省会をする。
何もあんなにムキになって言い返すことはなかったのに、その場の空気を悪くして周りにも嫌な思いをさせてしまった…。そう考えていたところへ電話が鳴った。
昨夜の彼が謝罪をしてきたのだ。
私は、突然のことで満足に言葉が出なかった。
「こちらこそ失礼しました。あなたより随分長く生きてるのに、大人げなかった。
次は笑ってお開きにしましょう」本当はこう言いたかったのに。