田舎に生きるふつうのおばさん2

北海道の田舎で農業を営むおばさんです

聞いてほしいこと 北海道新聞 北極星 平成28年1月20日

聞いて欲しいこと
       
 我が家は稲作農家です。
私が嫁いでから早いもので36年、今は夫と息子との3人で営農しています。
若いころは周りはみんな農家で、競い合ったり助け合ったりして地域の先輩方にたくさんのことを教わってきました。
良いことも嫌なこともありました。
何より嫌だったのは過去の苦労話を聞かされることでした。
最後には決まってこう言われるのです。「あなたはまだ若いからいいわね、私があなたの年の頃には寝ないで働いたものさ」と。
「体のどこも痛くないでしょ、痛くても一晩寝たら直るわよね」とも。
そのころ私はいつも思っていました(私が年をとったら若い人に自分の苦労話なんかしないわ)と。
 光陰矢のごとしとはよく言ったもので、いつの間にか私もこの地域では古株となりました。
たくさんいた先輩方もほとんどがこの地を去ったり、この世を去ったりして農家戸数は減り、地域で集まる行事への参加者も少なくなり、すっかり寂しくなりました。
 農作業は年々進化を続け機械化が進み、体は随分楽になりました。
この年になって思うのは昔の苦労したこと。言いたい言いたい誰かに聞いてほしい。
あの頃の先輩方の気持ちがよくわかる年になりました。
 私の住む地域には近年、新規就農される方が増えています。
先祖代々の土地を守ってきた農家とは違う苦労もあるでしょう。
自分のことは胸にしまって彼らの話にも耳を傾けていきたいものです。