田舎に生きるふつうのおばさん2

北海道の田舎で農業を営むおばさんです

米作り(旭川新聞 平成25年7月16日掲載)

春先、いつまでも溶けない雪に気をもみながら今年の米作りが始まった。
季節は移り、今は緑に染まった水田に約束したかのように夏の日射しが降り注ぐ。
「へび年に豊作なし」などという言葉を気にしながらも、いつも通りに種を蒔き、田植えをして、草を刈る。
少々の野菜を手土産にお客様へお米を配達する。
お客様の「お宅のお米が一番美味しい」という言葉が何より励みになる。

私が嫁いだ三十年前には、舅と私たち夫婦の三人で毎日一升二合のご飯を食べた。
業務用の炊飯器を持って嫁に来た私だった。
息子が高校生になった頃には「妖怪ハラヘラシ」と名付けた程よく食べた。
今も「パンも麺類もご飯の代わりにはならん」と言ってのける。
私たち夫婦は血圧や膝の痛みが気になる年頃になり、好きなご飯を少し我慢するようになった。それでも四人家族で毎日七合のご飯を炊く。
三百六十五日ご飯を炊かない朝はない。

農業は作物の命をはぐくみ、その実りを頂いてたくさんの人の命を支えている。
重労働に体が悲鳴を上げることもあるが、使命を感じるとき、やりがいのある仕事だと思う。
私たちが米を育て、米が私たちを育てる。

これから政治の世界の駆け引きがどうなっても、私は毎朝ご飯を炊き続け、毎年美味しいお米を作り続ける。
それは変わらない、変わってほしくないことだと願っている。